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Ramsay Hunt症候群に対する鍼治療の一症例
−嗄声、嚥下障害を伴う一症例−
愛知地方会・東洋医学研究所
○山下喜代 石神龍代 黒野保三
【目的】Ramsay Hunt症候群(以下Hunt症候群)は水痘帯状疱疹ウィルスの再活性により、第Z・第[脳神経を障害するといわれ、帯状疱疹・顔面神経麻痺・耳鳴りなどの内耳症状が3主徴とされている。今回、これら3主徴の他に嗄声、嚥下障害を伴う重症例に対して鍼治療を施したところ、興味ある結果が得られたので報告する。
【症例】A大学付属病院にて約4週間(18回)にわたりステロイド治療を受けるも症状の改善がなく、回復不能と診断された嗄声、嚥下障害を伴うHunt症候群の患者(69歳男性)に対し、毎日あるいは隔日に、30mm18号ステンレス鍼を用いて単刺術にて、生体の総合的統御機構の活性化を目的とした太極療法(黒野式全身調整基本穴)と症状の改善を目的とした局所療法を行い、顔面運動スコア(40点法)と不定愁訴カルテを用いて治療の経過観察を行った。
【結果】 嗄声、嚥下障害については、声は出るようになり、嚥下も気をつければ問題なく出来るようになった。左顔面神経麻痺は40点法において初診時に完全麻痺に分類される6点だったが最終時には正常範囲である36点と回復した。不定愁訴指数は初診時に15点だったが22回目来院時には7点となり、不定愁訴指数減少率は53.3%で効果判定は有効であった。また、その他の症状も改善された。
【考察・結語】 医師より回復困難といわれ患者の最も危惧していた嗄声、嚥下障害が鍼治療により回復したことは、QOL向上に伴う不定愁訴改善につながった大きな要因と考えられる。
末梢性顔面神経麻痺は自然回復する例が多いと報告されているが、本症例は完全麻痺に加えて発症から約2ヶ月経過していることから、自然治癒ではなく鍼治療によって回復したものと考えられた。 今回、40点法や不定愁訴カルテを用いることによってRamsay
Hunt症候群に対する鍼治療の有効性を客観的に証明することができた。 |